施工事例

新築施工例

仲井町の家

1階「半外の間」側から「外の間」を見る。

外観。1階「半外の間」から「外の間」越しに玄関を見る。

1階「北の間」

1階「中の間」から「外の間」を見る。

1階「中の間」。障子越しの光が柔らかい印象です。

1階「南の間」にはストーブを。

1階「階段ホール」。階段の下には手洗い、コート掛けがあります。

2階「廊下」にある書斎スペース。

桧のハーフユニットバス

仲井町の家は、室内の住環境と外部の自然環境を融和し、知覚要素である風や光、音、匂いなどを享受することで、人間にとって心地よい原初的な住空間を目指した住宅である。

計画地は、桜のある公園に面した高台にあり、借景、採光、通風に恵まれた土地であった。この土地を魅力を最大に生かし、環境をさらに向上させることを検討した結果、中庭を持つ、木造2階建ての4間角の母屋と、木造平屋建ての離れの分棟の配置計画とした。各棟の間口寸法は同じであり、各棟は柱芯距離で4mというコンパクトな離れ寸法とした。その為、1階は離れから母屋まで連続的に続いているような不思議な空間構成となっている。この母屋、中庭、離れを含めた一体的な建築が、仲井町の家である。

離れは道路側、母屋は敷地の奥側に配置し、町に対する圧迫感を抑えながら母屋のプライバシーと防犯性を高めている。1階は「北の間」、「外の間」、「中の間」、「南の間」という居場所を設えている。その日の気候、家族の状況等によって、各々が適切な居場所を決めて、寛いだり、食べたり、仕事をしたり、自然環境に寄り添えるような寛容な空間とした。道路側にあるパブリック性の高い「北の間」は、現状は書斎として利用している。「中の間」の木製ガラス框戸は、全開にすることができ、半戸外のように「外の間」と一体的な空間となる。また「南の間」の窓も全開にすると、この地を通る風が良く抜けて、外にいるかのように鳥や虫の鳴き声、木や花の匂いを室内で堪能することができる。また、母屋の2階は寝室と水廻りのあるプライバシー空間となっている。

近年の住宅は、高気密高断熱、防犯対策、メンテナンス効率等の傾向で外部環境との繋がりが希薄になりつつあるように感じている。その恩恵も多く存在はするが、人間の知覚から享受できる感性もまた、弱まっているのではないだろうか。仲井町の家が、そんな現代住宅の抱える問題について、再考するきっかけとなれば幸いである。

設計:鈴木雅也建築設計事務所(https://www.masayasuzuki.jp/)
建築内容: 木造軸組構法平屋建、2階建
延床面積: 母屋:100.48㎡ 離れ:25.15㎡