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TAKEWAKIブログコラム

【代表インタビュー③】千葉県の台風被害と建築業者の動きについて<前編>

昨年9月と10月に千葉県を直撃した台風によって大きな被害が発生しました。

「令和元年房総半島台風」として激甚災害に指定された当災害では、千葉県の特に南部を中心に甚大な人的被害や建物への被害が及びました。

今回は当時の台風被害と建築業者の動きについて、弊社代表の竹脇の思いをお伝えすべく、インタビュー形式でお届けいたします。

 

昨年の千葉県台風による被害について

昨年の千葉県台風による被害について

 

――昨年千葉県内で起こった台風での甚大な被害や、特に建物の被害の状況についてお聞かせください。

 

 

まず昨年の9月と10月に千葉県を襲った2つの台風と、さらに10月25日に起こった大雨による住宅に関する被害状況ですね。

災害が起きた際に被災者は「罹災証明書」という住宅が被害にあったことを証明する書類を各市町村の役所でもらうことができるのですが、昨年の台風ではその件数が全体(当該の災害において)で8万7千件以上もありました。ただしその8万7千件の内訳においては、半壊や全壊などのいわゆる「かなり壊れてしまった」住宅の割合というのは全体の数%で、数としては実は少なかったんですね。

例えば今年7月の豪雨による熊本の水害を例にとると、ほとんど家が水に浸かってしまったというような、いわゆる半壊以上の被害が多かった。対して昨年の千葉の台風の場合は一部損壊(被害の度合いが20%未満)が多かったという特徴があります。「強風によって屋根が少し壊れてしまった」「瓦が飛んでしまった」「窓や外壁が壊れた」などの、住宅の一部が損壊したという被害ですね。そういったケースが全体の9割のおよそ8万件ほどと、圧倒的に多くなっていました。また災害による死者数やケガをした人の数も、災害の規模に対しては多くはありませんでした。

しかし小規模にせよ、まだ住宅の被害が残っている……特に屋根の被害でいまだにブルーシートがかかりっぱなしという家がかなりの軒数あるという状況ですね。

 

 

――では現在も、復旧作業や住宅の修理などは続いているのですか?

 

 

まだ続いています。実は昨日(インタビュー前日の7/12)も、弊社が担当している屋根修理の件で館山まで行ってきました。担当した住宅の修理も受けた分まではほぼ終わりましたが、今回はまだ何件か残っているうちの1件ですね。

そして、その館山からの帰りに南房総市や鋸南町といった被害の大きかった市町を廻って見てきました。災害発生当時より減ってはいるものの、まだ相変わらずブルーシートのかかった家が散見されました。災害からもう少しで1年が経とうとしている中で、修理がなかなか進んでいないという現状があるんですね。

しかし何万件という被害があった2年前の大阪の台風でも、損壊した住宅の修理が2年経った今もなお続いているという状況もあります。そのため千葉県の災害復旧に時間がかかることも、当初からある程度の想定はされてはいたんです。千葉も1年じゃとても復旧しきれないだろうということは分かっていたんですね。

 

 

――それは復旧に携わる業者の数に対して被害に遭われた住宅の数が多くて、修理の手が回らないということもあるのでしょうか?

 

 

それも大きな要因です。県内でも特に南の方の館山市、南房総市、鋸南町、鴨川市などは人口が少ない分、業者も少ないんですね。少ない工務店や大工さんのところに仕事が一気に来てしまった結果、300〜400件という数を1社でこなさなくてはいけない状況に陥ってしまったんです。

例えば私たちの会社がある東葛地域(千葉県の松戸・柏・流山・船橋などの地域)であれば、損壊した住宅の数は多いものの業者もたくさんいるので、もう少し早く対応できるという面はあるのですが……それと比べると南の方は圧倒的に業者が少ないんですね。

 

修理の手が回らないもう一つの原因としては、地元の馴染みのある大工さんに依頼したい人が多いという点もあります。「知っている大工さんの手が空くのをひたすら待ち続けている」といったお宅の修理が進まず、いまだにブルーシートがかかっているということがあるんです。

 

さらにもう一つの理由として、郊外のエリアと都市部に近いエリアでは施工単価が違うということも挙げられます。たとえ材料が同じだったとしても、施工する手間賃としてかかる費用の分の差が出てしまうんです。

これはどういうことかというと、実は一部損壊の中でも「瓦が壊れてしまった」というお宅が大半なんですね。ところが瓦屋さんというのは、千葉や神奈川など関東近郊を見ても、業者自体がどんどんなくなってしまっています。当然、私どものところにも「瓦が壊れた」という依頼がくるのですが、いつも頼んでいる瓦屋さんも依頼を何千件と抱えてしまっていて、すぐには来れません。そのため、他県の瓦屋さんに応援に来てもらっているような状況になっています。

一方で地方を見てみるとまだ瓦の需要がある県はあって、その中でも熊本からはすぐに「手伝いますよ」という声がかかり、向こうから応援に来てくれました。熊本には2016年の地震の時にこちらから支援をしたこともあり、その恩返しという意味もあったかもしれません。

ただ当然来てもらう場合には、交通費や滞在費などがどうしても加算されます。すると必然的に地元の業者よりも単価が上がってしまいます。しかし依頼する人の中には「そこまでの金額は出せない」という人もいらっしゃるんですね。相見積もりをとって熊本の瓦屋さんと地元の瓦屋さんを比べると、後者の方が当然安い。そうなると、「ある程度の期間を待ってでも安い方でやってもらいたい」という人もいます。依頼する方からしても、もともと自分がやりたくてやっている工事ではないので、できるだけお金を使いたくないんですよね。

そういった理由がいくつも重なって、復旧が進まないという状況になっています。

 

台風被害発生時の建築業者の動き

台風被害発生時の建築業者の動き

全木協千葉県協会の集会の様子

 

――では昨年の台風による被害発生時の、建築業者の動きについて教えてください。

 

 

災害発生当初は、県や市などの行政の方から私が代表を務めている千葉県の「ちば木造建築ネットワーク」という工務店の団体に対して、「応急修理をしてくれる業者さんはいないか」ということで声がかかりました。そこで対応できる工務店に手を挙げてもらったのですが、やはり各社それぞれ忙しいこともあり、10社くらいしか手を挙げられなかったわけですね。

発災当時、応急修理が必要な住宅の件数が1か月ほどで何万件という状況がわかっていたので、とても地元の業者だけではまかなえないということになりました。そこで今度は国から、これも私が代表を務めている「全国木造建設事業協会(全木協)」という、大規模災害時に木造の応急仮設住宅を建てる為に設立された団体の千葉県協会に、応急修理を頼めないかという話が来ました。

全木協千葉県協会というのは我々工務店や職人さんなどが入っている団体なのですが、実は昨年の台風被害の発生当初は南房総や館山などの方で、仮設住宅を建てるという話が一時出たんですね。ただ全壊した家が少なくその必要性がないということで、代わりに圧倒的に需要が多い応急修理の話が出てきたんです。

しかし単純に我々が業者のリストを出して、罹災者の方々に「各自電話してください」と呼びかけることは簡単なのですが、それでは上手くいかないということが、他県での事例からわかっていました。

ところが我々が自ら見積もりに行くのにも電話を受けるのにも人手がかかるので、どうしても費用がかかってしまいます。それを全てボランティアで行うのは難しいわけです。

そこで、国の方から災害復興活動を対象とした補助金についてアドバイスをいただきました。それを受けて我々は、見積もりや相談受付窓口にかかる人件費等を補助金でまかなうという仕組みを作ったんですね。工事を請負した後の施工自体は普通のリフォーム工事と同じなので各業者が行ってくれます。そこに至るまでの相談や見積もりなどの人件費を補助金で賄うことで、千葉県の工務店で応急修理を行うことができるという仕組みです。

こういった仕組みというのは今まで全国的に見てもありませんでした。

 

 

――今までになかった仕組みを作ったのですね。

 

 

そうです。他の県でも、建築士の方々が相談窓口を開いて、被災した方々へアドバイスを行うというケースはあったんですけれども、実際に施工する業者の紹介まではできていませんでした。建築士さんはあくまで設計事務所の人なので、自分の知っている工務店は紹介できても、すべての応急修理をまかないきれるほどの業者の斡旋はできないわけです。

反対に職人さんだけでやろうとしても、工事はできるけど今度は見積もりができない。見積もりも、職人さんの手配もとなると、やはり普段元請けとして直接お客さんから契約をいただいて施工している工務店しかできないわけですね。

その人たちを束ねている私たち全木協千葉県協会として、急遽応急修理事業の仕組みを休日返上で2週間程度で作りました。修理業者のリストや被災者を対象とした応急修理の配布方法などをまとめ、フリーダイヤルや事務局も設置して、あらゆる枠組みを全部整えた上で、11月7日に県の報道発表がされ事業がスタートしました。

当初は半年もやればある程度は目処が立つだろうという見立てでいたのですが、半年経っても全然目処が立たず……。そこで国や県から、「年内までこの事業を続けてもらえませんか?」という依頼がありました。そして国に補助金の再申請をし、つい先週その採択が下りたところです。

そのため現在も継続して月曜日から土曜日までフリーダイヤルを開けていて、数は少ないものの必ず電話はかかってきます。しかしながらまだ知らない人もたくさんいらっしゃいますし、「大工さんに頼んだけど、もうやっぱり我慢の限界だ」ということで、やっぱりこっちにお願いしますという人もいらっしゃいます。

 

 

――ではやはりまだ時間がかかるのでしょうか?

 

 

そうですね。そのため継続の要請を受けて、まだ活動を続けています。

とはいえ、そうこう言っているうちにまた台風の季節がやってくるので、また同じような台風がきて、また同じような被害が起きる可能性は大きいです。先日の九州豪雨もそうですし、毎年必ずどこかで大きな災害が起こっています。熊本地震以降で見ても、西日本豪雨、大阪の台風や地震もそうですし、そしてまた今年の九州豪雨。そしてまだこれで終わりとは限らない。例えば大規模な地震が私たちの周辺で起きてしまうかもしれない。その可能性は高いのも分かっています。

そういう時のために我々が何をできるのかということを考えなくてはいけません。起きてしまったものはもう止められないので、なるべく災害に遭っても家が倒れないようにするとか、命を守れるようにするとか、もしも災害が起きてしまった後にどう復旧していくのか。一時的に応急仮設住宅を建てるのか、修理をどうするのか、そのようなことを日常の仕事をしながら、我々の役割として常に準備をしているというような状況ですね。

 

 

――逆に災害が起きた際の全木協の動きがなければ、今ほどの復旧もできておらず、もっと時間がかかっていたのでしょうか。

 

 

その可能性もあったかもしれません。今は少なくとも1件でも2件でも多くの被災者の人を、1日でも早く復旧へ導くことができたらと思っています。

はじめは「8万7千件のうち半分以上の修理が来るかも知れない」などという試算もして、なかなか難しいという見立てもありました。しかし実際蓋を開けたら思ったよりは来なかったんですよね。それでも当初はいっぱいいっぱいで、割り振るのにけっこう時間がかかったり、なかなか見積もりに行くまでに時間がかかったりしました。しかし今は少し余力があるので、またたくさんの依頼が一気に来ても、ある程度は対応できるような体制は整えてあります。私が行かなくても、各工務店の人たちが回ってくれていて、この何ヶ月かは弊社の方には依頼が少なくなりました。ということは今来ている件数は、今動いている工務店の人たちで賄える状況にあるということになります。当初は弊社にも20〜30件と一気に来ていたので大変だったんですけど、それが落ち着いて業者も増えてきて、さらに依頼の数も減ってきたので、今は少しは余裕を持って伺えているという状況ですね。

 

 

【代表インタビュー③】千葉県の台風被害と建築業者の動きについて<後編> へ続く

【代表インタビュー③】千葉県の台風被害と建築業者の動きについて<後編>

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